ストレスからの解放で心身を整え
明日への活力を養う。
健康を回復・
増進させる「湯治」
現在では観光地として捉えられることが多い日本の温泉地は、もともとは湯治をする場所でした。湯治とは、温泉に入ることを通じて病気の治療や健康の回復を図ることです。湯治場としての温泉の歴史は古く、8世紀頃に編纂された『風土記』にも記述があります。
温泉のうち特に療養に役立つ「療養泉」は、温度や含有成分によって10種類の泉質に分類されます。温泉の適応症には、泉質を問わず共通する「一般的適応症」と、泉質によって定められた「泉質別適応症」があります。 それぞれの特徴を知っておくと、目的に応じた利用に役立つでしょう。温泉療養は、特定の病気を治すというよりも、症状・苦痛の軽減、健康の回復・増進など全体を改善する効用があります。
温泉と温泉地の
効果が明らかに
温泉地の多くは、山、里、川、海など豊かな自然の中にあり、自然が育む食にも恵まれています。加えて開湯伝説が伝わる寺社や、工芸品などの文化的遺産も豊富です。温泉地の心身への健康効果を考える際には、温泉そのものの効果はもちろん、転地・気候などの環境による効果、そして、食事や運動などの効果を無視することはできません。
環境省では平成30年度より「みんなの新・湯治プロジェクト」として温泉地全体での療養効果を測定する調査を実施しており、これまでに「長期間の温泉地滞在でなくても、年間を通じて高頻度で温泉を訪れることで心身への良い影響がある」「単に湯に浸かるだけでなく、温泉地で何らかのアクティビティを行うことが心身へのより良い変化を促している」といった調査結果が得られています。
短期間滞在の現代湯治で
心身を健やかに
石川県下の山中温泉・山代温泉・片山津温泉・あわづ温泉・辰口温泉・白山温泉郷の6温泉地も、古くから湯治場として知られ、大勢の湯治客を癒してきました。6つの温泉地は、それぞれ異なる歴史、泉質、風情を持つ温泉を有しながらも、白山に登拝する修行僧による開湯伝説や、水資源の循環、景観という面で、共通して霊峰白山のめぐみを得ています。昔ながらの長期滞在の湯治は難しいかもしれませんが、一泊でも二泊でも温泉地に滞在して、心身の健康づくりに役立てたいものです。